ニホンザリガニの飼育・増殖の記録(2017.7~2019.2)

 大館市では、平成29年度(2017年度)から天然記念物「ザリガニ生息地」の再生事業に取り組んでいます。絶滅が危惧される天然記念物指定地水系のニホンザリガニを後世に継承するため、生息地の創出と人工増殖を行っています。
 このページでは、大館郷土博物館で実施している飼育展示と人工増殖の記録の一部を紹介します。
 ニホンザリガニは河川流域ごとにDNAが異なるといわれています。大館郷土博物館では、A生息地(大館市内の天然記念物指定地水系)とB生息地(大館市西部)のニホンザリガニを飼育していますが、DNAが混ざらないように、細心の注意を払っています。

図 大館市産ニホンザリガニ。

生息地の環境

 生息地保護のため、A生息地、B生息地ともに位置情報は非公開とします。ここでは、B生息地の環境のみ紹介します。この生息地は湧水地から流れ出す小川で、夏でも水温が低く保たれています。針葉樹と広葉樹に囲まれ、水面にはニホンザリガニのエサとなる落ち葉が供給されています。水深は1~3cm、深い所でも5cm程度です。

 

食べるもの

 大館郷土博物館では、エサとして落ち葉と配合飼料を与えています。水温が高い夏はよく食べますが、水温が低い冬はあまり食べません。

 

弱肉強食の世界

 エサをめぐってケンカすることがあります。脱皮をするときは共食いされることがあるので、通常時は1匹ずつ個別に飼育します。

 

脱走名人

 

 ニホンザリガニは脱走名人です。野外生息地から水槽へお引越しした後しばらくの間は、すき間から脱走しようとすることがあります。

 

交接・精胞付着の確認

 通常時は共食いを防ぐためオスとメスを分けて一匹ずつ飼育していますが、交接をする時期だけ、オスとメスを同じ区画で飼育しました。交接(交尾)をしてメスの腹部に白い精胞が付着していることを確認した後、個別飼育を再開しました。

【2018年ふ化用】

○ペア1(A生息地産)
・オス 全長64.0mm(頭胸甲長31.4mm)
・メス 全長57.9mm(頭胸甲長26.5mm)
 雌雄混合飼育期間:2017.11.28~2017.12.27

○ペア2(B生息地産)
・オス 全長52.6mm(頭胸甲長25.0mm)
・メス 全長49.8mm(頭胸甲長23.9mm)
 雌雄混合飼育期間:2017.11.28~2017.12.27

【2019年ふ化用】

○ペア1(A生息地産)
・オス 全長68.4mm(頭胸甲長34.3mm)
・メス 全長60.8mm(頭胸甲長27.2mm)
 雌雄混合飼育期間:2018.12.6~2018.12.27、2019.1.19~2019.1.24
 ※2019.1.18にメスに付着した精胞が取れてしまったので、再度、雌雄混合飼育を実施した。
○ペア2(A生息地産)
・オス 全長53.4mm(頭胸甲長26.7mm)
・メス 全長51.3mm(頭胸甲長24.3mm) 
 雌雄混合飼育期間:2018.12.6~2018.1.19
○ペア3(B生息地産)
・オス 全長61.6mm(頭胸甲長29.2mm)
・メス 全長70.0mm(頭胸甲長33.4mm) 
 雌雄混合飼育期間:2018.12.6~2018.12.27

図 交接のあと、腹部に精胞が付着したメス(白い部分)。

抱卵

 A生息地産の個体は3月27日に、B生息地産の個体は3月22日に、腹部に卵を抱いていることが確認されました。色は薄茶色でした。6月に確認したら、色は黒色に変化していました。
 飼育展示用として雌雄混合飼育をしなかった個体も卵を産みましたが、受精はしていないのでふ化はしませんでした。産卵から約2カ月のころに確認したところ、卵の色はオレンジ色でした。

図 産卵して間もないころの卵(薄茶色)。撮影:2018.3.22。

 

図 産卵して3か月経過したころの卵(黒色)。撮影:2018.6.15。

 

図 交接をしていないメスが産んだ無精卵(オレンジ色)。撮影:2018.5.19。

 

ふ化

 ビーカーで個別保育した卵は7月13日~23日にかけてふ化し、赤ちゃんが誕生しました。この時点では、自力で起き上がって歩くことはできませんでした。
 母親の腹の下でふ化した個体は、一回脱皮して自由に歩けるようになってから、親から離れ自立しました。

図 ふ化直後の様子。撮影日時:2018.7.13。

 

稚ザリガニの成長

 2018年7月に生まれてから半年の間に5回脱皮しました。2019年1月時点で、全長は14.5~20.0mm、頭胸甲長は7.0~11.0mmでした。

 

脱皮した稚ザリガニ

 脱皮すると大きくなります。自分が脱いだ殻を食べて栄養を補給していました。

 

 

 

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